みちしるべ 

「そろばんと情報機器、
    そして脳のこれから」


全珠連学術顧問  河野 貴美子
 (日本医科大学情報科学センター主任研究員)

全珠連学術顧問 河野貴美子氏


 最近、そろばんへの注目度が上がってきていると言われています。確かにテレビ取材も多く、しかも、その内容の幅も広がってきているように思われます。しかし、同時にかなりバラエティ色の強いものも目立ち、最近の脳トレブームの一つと位置づけられているような企画も見受けられて気になります。――もっとも、単に、懐古趣味的なだけでも困りますが。
 私自身は、そろばんは小学校で習ったのみ――とはいえ、電卓に変わるまで使い続けましたが――、そんな私が珠算界に関わるようになったのは、そろばん日本一になった方の脳波をテレビがらみで計測してからです。
 当時は、研究室に脳波計が入って間もない頃で、さて、脳波の何を、どのように解析すれば、何が分かるのか、まだまだ試行錯誤でした。右脳と左脳の機能を脳波で明らかにできないかと、学生を被験者に暗算課題やイメージ課題を課し、ああ、やっぱり計算は左脳かな、と結論を出しかけていた時でした。全く違うパターンを示す珠算式暗算に出会い、以後、次々と多くの有段者にお世話になりました。
 あれから10数年、当時のアナログ脳波計はデジタルに変わり、さらに小型化されました。解析機器も大きなシグナルプロセッサーから、汎用のパソコンで可能になり、小さなノートパソコンでも記録容量は格段に増えています。あの頃、ご協力いただいた貴重なデータは、現在のものと同等には扱えず、当時、プリントアウトしたものをそのまま使ったり、数値化して、組み入れたりしているのが現実です。
 パソコン、携帯電話など、目まぐるしく変わる機器に私たちは翻弄させられ、遅れまいと必死になっていますが、そんな激しい時代の波にも、決して自分を変えないそろばん……といったら皮肉に聞こえてしまうでしょうか。
 そろばんの主役はあくまで使う人の脳、そろばん自身は控えめな道具に徹しているから、変わる必要はないのです。
脳の世紀と言われて幕が開けた21世紀も早くも7年目。科学の世界は10年もたてば新時代と言われます。ますます高齢化する社会の中で、科学の波やブームにおぼれないよう、自らの脳をしっかり鍛えておきたいものです。

*この欄は、学術的な見地から珠算・珠算学習について研究・助言されている大学教授ほか学識経験者によって構成される全珠連学術顧問の方々からご寄稿いただいています。

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