みちしるべ<コンピュータ時代のそろばん> 

みちしるべ


コンピュータ時代のそろばん

 そろばんが脳の視点からあらためて見直され、塾生や検定受験者が増大する方向に向き始めたといわれてからすでに10年ほどたったでしょうか。小学校でもそろばんの授業がほんの少し増え、一時期算数の教科書に導入された電卓は今では姿を消したようです。

 初等算数の段階で、電卓で計算させるのは論外としても、電卓マークが消えた裏には、コンピュータの世界の進歩が著しく、もはや電卓の時代ではなくなってきたから、という考え方もできなくはありません。私たちが望むと望まざるとに関わらず、これからの社会にコンピュータは当然のことながらますます入り込んできます。チェスのプロがコンピュータソフトに初めて負けたのはもう20年近くも前でした。将棋はまだまだといわれていましたが、互角になり始めています。2045年にはコンピュータの知能が人間を上回るともいわれているのです。

 そして今、小学校では電卓どころかタブレット端末の導入が本格的に検討されようとしています。ノートとともに持ち運ぶにはそろばんより収まりがよいうえ、計算のみならず全教科の内容が、どうしたらもっとわかりやすく面白くできるか、一生懸命考えられて入っているのです。カラフルな動画できれいに見せてくれるし、わからなければ、工夫するより先にいくらでもわかりやすい表示に変えてくれ、とにかくよくわかった気にさせてくれる道具です。子供たちは何となく満足し、先生方にとっては教材作りが簡単で、それぞれの子供の能力にあった課題をやらせることも容易です。
 
 でも、本当にこれでいいのでしょうか? 私たちの脳は外部環境にうまく合わせて、自身の回路を形成していきます。指先はタッチの入力に使うだけ、内容は考えるより先にあれこれ示してくれる…、コンピュータが人の知能を上回る前に、そのような環境で形成された脳の方に問題が生じそうです。
 
 コンピュータを作るのも使うのも人間のはずです。人の知能を上回り暴走するコンピュータの世の中にならないような歯止めとして、脳をしっかり使い育てる手立てとして、一見古く見えるそろばんを、これからのコンピュータ社会にうまく組み込んで活用する方法を考えたいものです。

 

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