尼崎市における『計算科』導入の効果について 

第56回全国珠算研究集会 講演 (講師・発表者の敬称略)

「尼崎市における『計算科』導入の
         効果について」


  尼崎市教育委員会・教育次長 徳田 耕造 

講師の徳田耕造氏
※講師の徳田耕造氏

はじめに

 全国的に学力向上が話題となり、尼崎市においても長年の課題であった。これまでも各種の取り組みを実施してきたが、その成果は保護者等も含めて実感できるものではなかった。
 「計算科」、すなわち、珠算を導入することのねらいは、「点数に見える学力向上を図ろう」というものであった。

尼崎における教育の動向

 現在が大きな転換期で、20年間で児童数が5割以上減少した。今後は安定期と予想される。また、教職員の世代交代が急速に進んだ。ここ8年で小学校429人(約38%)、中学校で139人(約14%)を採用した。
 市では学力向上の課題に対して「学力・生活実態調査の実施」ほかの取り組みが始まり、継続されている。

尼崎市・学力向上に向けての対応
 「計算科」を含めて、尼崎市では以下の取り組みを行っている。

◎学力・生活実態調査
  量的調査と質的調査
  4校でフィールド・ワークの実施
◎「計算科」の実施
◎きめ細やかな教育推進事業
  ①中学校基礎学力向上プロジェクトの実施(平成18年から・継続)
   中学校16校に補助員の配置(週4時間、中一が対象)
◎基礎学力向上プロジェクト(平成15年から・継続)
  ①小学校20校に補助員の配置(週4時間、中1が対象)
◎学習習慣支援事業
  ①教育啓発誌の発行(平成18年から・継続) 年間3回、保護者・地域向け
  ②土曜チャレンジスクール事業(平成19年から・継続)
   年間35回を上限に土曜2時間、教職経験者1名、大学生等5名
◎特色ある教育活動推進事業
  ①言語力向上事業
   小・中学校3校で国語・算数以外での特色づくり事業
  ②指導力向上等事業
   全教員による年1回の研究授業
  ③マイスター認定事業
   教科指導の名人を認定。17名(小9人・中8人)
◎学力向上関係のみの予算推移

教育課程特例校制度における「計算科」について

◎計算科導入まで
  全国的にも学校選択制や小中一貫校・中等教育学校・二学期制・少人数学級の
  導入など、教育改革が取り組まれた。
  授業に集中できない、指導に従わない児童・生徒が増加し、不登校児童・生徒も
  憂慮すべき状況である。
◎計算科の目的
  ①珠算学習を通じて集中力や持久力の向上を図るとともに、日本の伝統文化の
   良さを体験させ、豊かな人間性の育成を図る。
  ②家庭での取り組みや地域人材の活用・要綱団体等との連携を図ることにより
   「珠算による学校と地域の交流・活性化」を目指す。
  ③「暗算を楽しめる児童」「数を見て判断できる児童」の育成につながることを
   目指し、日常生活や地域活動で活かせる計算能力の向上を図る。
◎期待される効果
  ①右脳の発達(知覚→記憶→選択の流れ)脳の活性化によって算数以外の幅広い
   教科の学習に効果
  ②集中力・記憶力・洞察力・情報処理能力・速聴・速読能力の向上
  ③暗算を含めて、実用性が高く、永年的効果が期待できる
◎具体的な内容
  小学校に「尼崎計算教育特区」として「計算科」の時間を設置
  (現在は教育課程特例校)
  ①平成16年に1校→5校→10校→15校→21学校(平成20年)
   平成21年に全校(43校)で実施
  ②小学校2年生の3学期から始め、3年生から6年生まで年間50時間「計算科」
   を実施。(現在は3・4年生で実施)
   週あたりでは週1回(45分)と週3回(10分)
  ③珠算団体の協力による「珠算指導非常勤講師」の配置
   (現在24名の講師に依頼)
  ④キッズ検定の実施
◎児童・保護者の評価・「計算科」のこれまでの評価
  児童・保護者から好意的に受け入れられた、また、教員の意識改革にも
  役立った、そして尼崎市としてのイメージアップにつながった。

「計算科」の学力調査における効果

 算数の成績だけでなく、他教科にもよい効果が表われた。

「計算科」を含めた尼崎の教育の今後

 これまでのことから、現時点では「計算科」導入により学力向上の効果は認められる。しかし、直接関係のないと思われる国語や社会の成績が向上している理由は何か。この効果が「計算科」導入に伴うものなのか、それらを含めた「積極的な取り組みによる効果」なのか、以上の調査が必要とされる。

◎「計算科」の今後
  児童や保護者、市議会等の関係者、導入校、さらに学力生活実態調査の
  評価等を総合的に検討し、すべての学校で導入された。
  今後は3年間を経過した時点で、全市的な調査を行い、評価及び効果を
  検証していく。
◎尼崎市の教育の今後について
  学力向上は尼崎市における最大の課題である。
  ただ、点数に表される学力だけでいいのか、と思う。
  また、徳育や体育との関連はどうか。各学校において自らの課題を明らかに
  し、そのための具体的な取り組みとその成果を出していくことが求められる。

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