「脳活動の仕組みの解明・研究と応用ついて」 

第55回全国珠算研究集会 講演

「脳活動の仕組みの解明・研究と
          応用について」


  川島隆太 東北大学加齢医学研究所教授 

「脳を使う」教育とは「手を使う」教育・川島東北大教授  「脳を使う」教育とは「手を使う」教育・川島東北大教授
※「脳を使う」教育とは「手を使う」教育・川島東北大教授

まず脳を知る

 宮城県の観光と教育の仕事や兵庫県の小野市での仕事等多方面にわたって活躍している川島教授は「脳の健康を維持するにはどうすればよいか」を研究している。そして「なぜ、脳を知らなければならないのか」から講演は始まった。
 「なぜ脳を知らなければならないか、というと、人の認知や経験は絶対ではないからです」。脳が作り出す視覚も、経験が邪魔をして、明るさや色を違ったものにみせる。(画面ではすっかりだまされてしまう。)
 脳は場所によってまったく違う仕事を分担している。前頭葉(運動)・頭頂葉(触覚)・後頭葉(視覚)・側頭葉(聴覚)。
 右脳・左脳というのは脳神経外科から出た言葉で、人間とは前頭前野が発達した動物であるといってよい。

前頭前野を鍛える

 子どもたちの教育・生活の質に役に立つ場所が前頭前野である。前頭前野は①思考・創造②行動・情動の制御(我慢する)③コミュニケーション(顔の表情やジェスチャーも含む)④集中力⑤自発性(やる気)⑥記憶・学習を司る。
 子どもたちの教育の目標は、生きる力を作ることである。そのためには、自らがやる気になって考える、豊かな知識に基づく創造性が必要であり、すべて前頭前野を鍛えることである。そろばんをはじくことで前頭前野を育むことが実証されればすばらしいことである。
 20歳を過ぎると体力の衰えとともに脳も衰える。記憶のトラブル(会話の中に指示代名詞が増え、固有名詞が出てこない)、短期記憶の取り込み障害(冷蔵庫を開けた時、声をかけられたら、何を取りに来たか、忘れてしまう)が起こる。
 また、情動の制御ができなくなると、悲しい映画を見ると涙ぐんだり(感受性が豊かになったのでも、気がやさしくなったのでもない)、おこりっぽくなったりしたら、それは前頭前野が老化してきている証拠である。
 「認知症」は結果を表わす言葉であるが、前頭前野を鍛えることができれば、「アルツハイマー」と言われても家族とともに暮らせるかもしれない。
 この後、適切な情報処理・行動制御力を調べるストループテスト<青色で赤と出た文字を「あお」と色の名前で読む>をやって、会場は大いに盛り上がった。

そろばんでは『見取算』で前頭前野が働く

 脳の元気の元は何か。食事と睡眠である。脳はご飯(でんぷん)を食べないと働けない。いろいろなおかずを食べないと鍛えられない。
 神経細胞はブドウ糖のみで働く。しかし、神経繊維にはいろいろな栄養が必要である。だから朝ごはんをきちんと食べる。高齢者なら野菜・果物・豆類を多く摂取する。
 子どもの脳機能に良い食習慣は「朝食におかずが多い」、「味噌汁を食べる」、「野菜を食べる」、「手作りの割合が多い」、「夕食をたくさん食べる」ことである。
 どうすれば前頭前野を鍛えることができるか。単純な計算でも、複雑な計算でも筆算をやると前頭前野が働く。そろばんも見取算は前頭前野が働く。また、書くことが重要であり、コンピュータを使うと脳は働かない。
 「脳を使う」教育とは、「手を使う」教育である。
 前頭前野を鍛える三原則は
  ①「読み・書き・計算を行う」
  ②「コミュニケーションをとる(会話・旅行・遊びなど)」、「その場で褒める」
   (声をかける、よくできたねと声かけのできる先生がよい先生である)
  ③「手指を使って何かを作る」(料理・楽器演奏・絵を描く・字を書く・手芸・裁縫・工作など)
 である。

 最後に、アルツハイマー型の認知症患者の快方例がビデオで流され、脳科学のすばらしさ・可能性に驚嘆し、また、そろばんの有用性をアピールする方向性もアドバイスを受けた講演であった。

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