生徒に伝えるそろばんの歴史  

第55回全国珠算研究集会 研究発表

生徒に伝えるそろばんの歴史

  大阪府 大垣 憲造

歴史的にも貴重な「ローマの溝そろばん」(フランスの博物館所蔵)の写真を例に説明・大垣氏
※歴史的にも貴重な「ローマの溝そろばん」(フランスの博物館所蔵)の写真を例に説明・大垣氏

そろばんのルーツほかを児童に伝え、興味を持たせる工夫を

 古代メソポタミアの「砂そろばん」を起源とすると、そろばんは4,000年~5,000年もの長い歴史がある。これを生徒たちに分かりやすく伝えるには? 
 生徒が興味を持つには指導者の知識と伝え方の工夫がいる。
 例を挙げてみる。

名称の由来
 (呼び名には歴史的事実が多く詰まっている)
算盤
 この字は「そろばん」と「さんばん」の2つの呼び名があった。漢字で書けば同じだが、使い方が違う。
 ◎算木(計算する棒)
 ◎算盤(算木を置く盤・<布や紙>)
そろばん呼称の由来
 「中国語のスワンパンから」「揃盤(そろいばん)から」「珠がサラサラと鳴るサラバンから」など、いくつかの転訛説があるが『遡源語彙』の「ソルバン」が有力。
珠算
 1,800年ほど前、中国で徐岳という人が『数術記遺』という本を書き、その中に珠算という文字が出ているが、今のそろばんとは形が違う。
 団子玉が串にさしてあるそろばんは800年くらい前、張択端の『清明上河図』という絵巻に描いてあるのが有力な説である。
アバカス
 英語でそろばんは「アバカス(ABACUS)」と呼ぶ。その語源はギリシャ語のアバックス。(ABAX)さらに遡ればアバク(ABK)。アバクはヘブライ語で埃(ほこり)という意味らしい。
 アバカスの上に小石を置いて計算したが、この小石のことを「カリクル」と呼ぶ。これが計算すること「Caluculate(カリキュレート)」の語源である。

実物を活用する

 「百聞は一見に如かず」のとおり、子どもたちは「見る・触れる・そして考える」という順に指導すれば、よりよい効果がある。
 古いそろばんや珍しいそろばんの実物を見せながら話すと効果が絶大である。

外国にもそろばんがあるの?

 教室に中国やロシアなど外国のそろばんを展示しておき、生徒の質問に答える。
◎中国そろばんは天2地5で玉がダンゴ状なので、質問が多い。
 その歴史や現在の中国の競技会のことを説明する。 
◎ロシアそろばんは現地の言葉で「ショティ」と呼び、その歴史は古い。
 『10個の珠を全部右に寄せて、右から左へ動かしながら計算する』と簡単な加減の
 やり方を説明する。
◎西ヨーロッパのアバカスは東洋のそろばんと形態が違う。
 「線そろばん」が主流だが、唯一、ローマの「溝そろばん」だけがよく似ている。
 レプリカを見せながら『今から2,000年ほど前のローマでは今と同じように塾が
 あり、読み・書き・そしてそろばん(アバカス)も勉強していたらしい』と話す。

判明している事実を知らせる

 そろばんの歴史に関するエピソードは数え切れないほど多くある。どれを生徒たちに伝えようかと選択に迷う。もちろん、歴史の話にウソはいけない。現在のところ、判明している事実を教えなければならない。
 例えば、日本の絵に出てくるそろばんは埼玉県川越の喜多院にある『職人尽絵』(狩野吉信作)が初見だったが、それよりも前に描かれた愛知県名古屋氏博物館の『築城図』(1607年・城名・作者不明)が発見された。
 これまで紹介した例は、ほんの一部に過ぎない。そろばんの足跡を語ることによって、次代を担う大切な子どもたちが、一人でも多く歴史に興味を持ってくれることを切に願っている。

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://zenshuren.blog25.fc2.com/tb.php/155-1302b035