「私の教育改革論―算数・数学教育の大切さ―」  

研究発表
「私の教育改革論
   ―算数・数学教育の大切さ―」


  国際医療福祉大学大学院教授 和田秀樹 氏

基礎学力を重視する教育を・和田秀樹氏
※基礎学力を重視する教育を・和田氏

原点はそろばん

 小学校3年生の1年間、そろばん塾に通い、その時が充実していた。1年で3級に合格した。関西から関東に転校した時、関西弁でいじめられたが、計算が速いということで得をした。
 子どもの、ある時期は詰め込み教育が必要となり、鍛え上げなければならないときがある。米・英・日いずれも子どもを中心にして失敗している。
 「勉強はやればできる」ということを伝えたくて映画を作った。「格差社会では勉強することが大事だ」とされ、ヨーロッパでウケた。(モナコ国際映画祭グランプリ・受賞作品「受験のシンデレラ」・最優秀作品賞・最優秀女優賞・最優秀男優賞・最優秀脚本賞)
 フィンランドでは勉強することがカッコいいと思っている。勉強することがカッコ悪いというようなバラエティー番組はフィンランドのテレビ番組にない。
 江戸末期、日本は識字率が高かったと言われるが、フィンランドはもっと高かった。義務教育が早くから始まっていて、聖書が読めないと結婚できなかった。しかし、日本は義務ではなく、庶民が自分の子どものために自腹を切って、寺子屋に通わせていた。これはすばらしいことだと思う。

学歴社会から学力社会へ

 子どもの数が減ってきたので、学力の低い学生がいい大学に入っている(AO入試などで)。昔は国際化といえば外国へ行って技術を売ることだったが、今は違う。日本の会社に勤めていたら、ある日突然、外国人が社長になる。
 東京大学を出ているというのは役に立たない。ハーバード大学は上の方の研究員がすごいから大学全体が名門となり、(すべての)学生が学力がなくても名門と言われる。そこで成績や学力をモニターするための指数を開発する必要が出てくる。
 OECDが大学評価の国際調査の基準作りを検討している。学歴ではなく、どれだけ学力があるかが大事になる。教育レベルが国力である。頭のいい国ほど強い。教育にお金をかけるべきだ。
 フィンランドは教育費の占める割合が多い。しかし、日本では校舎は立派で、建物に金をかけている。「人が大事だ」という発想がない。

21世紀に求められる頭の良さとは何か―認知心理学から見た頭のよさ―

 生まれついての頭より、後からのソフトが大事。つまり勉強するということ。問題解決能力(思考能力)は知識を使って推論することができるということ。
 問題解決のために知識を用いて解決する。知識が多いほど自己の認知パターンを正しく知ることができる。自分を知るだけでなく、それを使って自己改造ができる。他人の知識を使って(賢い友達からの情報で)、より正しい推論ができる。
 IQが高いのに社会に出て成功できない人のためのアドバイスは、
 ◎自分の感情を知る
 ◎自分の感情がコントロールできる
 ◎自分を動機づける
 ◎他人の感情を認識する
 ◎人間関係をうまく処理する
 以上のことを心掛けて、21世紀に通用する頭の良さをつくる。

単純な計算と読み書きの意味

 脳が活性化する。以前は頭頂脳と思われていたが、前頭前野が活性化される。前頭前野が発達すると感情のコントロールができ、キレる子どもが少なくなる。
 計算の効果は脳のウォーミングアップ。脳の働き・記憶力がよくなる。
 日本の教育は何が悪かったか。
 詰め込み教育を悪とした。問題解決には知識を使うが、知識を疑う教育。東大に入るだけではダメ。

基礎学力重視は世界の潮流

 早期に基礎学力を獲得すると、問題処理の迅速化と時間の有効利用ができ、自信を持ち続けられ、受験以外の経験と知的能力を身に付ける余裕が生まれ、脳(前頭前野)の機能開発に役立つ。
 また、受験勉強を通して正しい勉強法を勉強することが大切。下手な勉強法は労力を無駄にする。成功体験が自信となる。できないときは自分が悪いのではなく、方法を変える。「やり方が悪いだけだ」と気づき、人生をあきらめないですむ。また、他の勉強に転用できる。

推論能力や試行力を身に付ける数学

 日本は文系社会で、政治家・役人に文系出身者が多い。しかし、調査してみると大学受験で、理数系・数学受験者の方が社会に出て、年収は多い(早稲田・慶応・上智の経済学部出身者で調査)。
 数学の3つのポイントは、計算力(速く正確な計算)、暗記力(問題を解くためにさまざまな解法パターンを暗記する)、試行力(問題を解くためにいろいろな解法を試す)。
 1つの方法で問題が解けなければ、他の方法が適用できるか考える。数学の問題の解き方は推論と問題解決能力に通じる。
 勉強にも基本的な道徳意識とルールが必要で、校内暴力が増えたときに不登校も増えている。
 計算力が人間力でもある。基礎学力を伸ばし、脱ゆとり教育が今すぐにでも必要である。

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://zenshuren.blog25.fc2.com/tb.php/143-88e27a7a