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みちしるべ 相手も自分も大切にするコミュニケーション 

みちしるべ
相手も自分も大切にするコミュニケーション
from 大木 桃代(全珠連学術顧問・文教大学教授・東京都国分寺市教育委員・東京大学医科学研究所非常勤講師)

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 私たちが円滑な人間関係を営む上で、良好なコミュニケーションが重要なことは、皆さんはよくご存じですよね。日頃からの生徒指導はもちろんのこと、日常生活においても良好なコミュニケーションを心がけておられることと思います。しかし残念ながら、いつもうまくいくとは限りません。そのような時には、少し距離を置いて、自他の言動を冷静に分析してみてはいかがでしょうか。

 私たちが自分の意見を相手に伝える時には、大きく三つのパターンがあります。

 一つ目は「攻撃的(アグレッシブ)」です。これは、自分の考えや気持ちを相手に押しつけて言い負かしたり、一方的に命令したりするやり方です。その背景には、「自分の考えは絶対に正しい」「自分の考えが通らないと我慢できない」という心理があります。このような人は、他者が従属しないと満足せず、対等で安心した関係を持てないため、結局孤立する怖れがあります。

 二つ目は「消極的(ノン・アサーティブ)」で、自分の考えや気持ちを何も言わなかったり、相手に伝わるようには言わない方法です。「もめごとは避けたい」「相手から嫌われたくない」「責任を逃れたい」という心理が働いています。いつもこのような表現をする人は、負担や忍耐が大きなストレスとなってしまいます。

 三つ目の「自他尊重(アサーティブ)」は、相手も自分も大切にする表現方法です。自分の考えや気持ちを明確に捉え、相手に正直にわかりやすく伝えます。同時に、相手の考えや気持ちも受け止め、理解しようとします。意見を出し合って、歩み寄りながらお互いに納得のいく結論を出そうとします。相互尊重の精神と、相互理解を深めようという自他を大切にする思いに裏付けられているのです。

 私たちはつい自分の考えを通そうとしたり、反対に自分の意見を言わずに穏便に済ませようとすることがあります。その場に適切な対応として、時には必要なことでしょう。しかし、いつも人を責めたり、我慢したりするだけでは、相手や自分を大切にしているとはいえません。困った時にはちょっと立ち止まって、どのようなパターンのやりとりが生じているのか、分析してみてください。みんなが幸せな気持ちになれるようなコミュニケーションを心がけたいですね。

※連盟機関紙「全国珠算新聞第633号(2019.1)に掲載

YELL VOL.5~社会の第一線で活躍するそろばんOBからの応援メッセージ~ from武藤 洋一 

YELL  VOL.5
~社会の第一線で活躍するそろばんOBからの応援メッセージ~
from 武藤 洋一(群馬テレビニュースキャスター)

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<略歴>※全珠連会報第167号(2015.7)に掲載時点
昭和23年 群馬県伊勢崎市生まれ
県立前橋高校、明治大学法学部卒
昭和46年 上毛新聞社入社 主に社会部畑を歩む
平成16年 取締役編集局長
平成20年 前橋工科大学非常勤講師
平成24年 群馬テレビニュースキャスター(現職)


放送時間は暗算で

アメとムチ
 昭和33年春、東京六大学野球でホームラン8本を打った長島茂雄がプロ入りした。開幕1軍はもちろん、スタメンで3番。4番はあの「打撃の神様」川上哲治である。開幕戦は相手の国鉄(現ヤクルト)先発金田正一が「プロの厳しさを教えたる」とばかりに全力投球。長島は4打席4三振だった。しかし、それからは打ちまくった。シーズンが終わってみれば打率は2位だったが、本塁打王、打点王を獲得。スーパースターの誕生だ。私は小学校4年生。野球ばかりしていた。だれもが長島と同じ3塁を守りたがり、銭湯に行けば長島の背番号「3」の下足札を奪い合った。
 そんなとき、父がこんなことを言った。「定時制高校で勉強している生徒が昼間は会社でアルバイトをしていた。その会社で経理の人たちが数字を読み上げてそろばんで計算していたが、何度やっても合わない。そのときにこの青年がお茶をいれながら、頭の中で計算をしていた。脇から恐る恐る『正しい数字はこれですよ』と言った。そろばんができる。暗算がすごいということで、卒業と同時にその会社に就職できたそうだ」。父の話はこのあと「だからそろばんを習え」と続いたのは言うまでもない。
 プロ野球シーズンが終わったその年の11月、近くの松岡珠算塾へ通い始めた。2年2カ月後・・・小学校卒業寸前の6年生の1月に1級合格を果たしたが、そのちょうど半分にあたる1年1カ月は2級に挑戦していた。何度も何度も落ちた。先生いわく「野球やってちゃ受からない」。軟式とはいえボールを強く握る行為がそろばんを弾く指にいいはずがない。私にそろばんを勧めた父は「2級が受かったら新しいグローブを買ってやるから、それまで野球はするな」とアメとムチで迫ってきたが、相変わらず続けた。そしてようやく受かって買ってもらった。1,250円。2級合格より、グローブの方がうれしかった。もちろん55年たった今も使える状態だ。

「勘定板」と「壺算」
 高校ではそろばんに触れる機会はなく、大学でも無縁だった。だが、落語が好きで寄席に通った。そこで聞いた話をしよう。一つは「勘定板(かんじょういた)」。尾籠(びろう)な話で申し訳ないが、あらすじはこうだ。海に近いところに住んでいる田舎者が江戸の宿屋に泊まる。その村ではトイレのことを「閑所(かんじょ)」と呼び、用を足すことを「カンジョウをぶつ」と言った。浜辺には紐をつけた「カンジョウ板」があり、用事が済むと紐を引いて海で洗うシステムだ。村人は宿で用を足したくなり、番頭に「カンジョウをぶちてぇ」と頼む。番頭は「どこで?」。村人は考えた。「海は遠いし・・・この部屋はどうも・・・そこの廊下でぶつべぇ。カンジョウの板持ってきてくれ」。「カンジョウ板ですか?」。番頭はいろいろ想像してみた。「カンジョウ、カンジョウ・・・勘定をする板・・・きっとそろばんだろう」と底に板が張ってある大きなそろばんを持ってくる。村人が用を足そうとそろばんを裏返しにしてまたがると、転がり出した。「こりゃすげぇ江戸のそろばんは車仕掛けだ」。
 もう一つの「壺算」。今はあまり見かけなくなった壺を買う話だ。壺の大きさは「一荷(いっか)」「二荷(にか)」と数える。本当は二荷の壺を買いたいのにまず一荷の壺を3円で買う。一旦店を出てすぐ戻り「本当は二荷の方がほしかった。取り替えてくれ」。ここからこの男と店の親父のやりとりになる。「さっき一荷の壺が3円だったけど、二荷はその倍の6円でいいかい。オレはさっき3円渡したなぁ」「はい。確かにいただきました」「さっき買ったこの一荷の壺は3円だから足して6円だ」「?????」「分からねぇのかい?…そろばん出してみなよ。いいかい。さっき3円渡したろ」「はい。確かに」「それとこの壺が3円だ。合わせりゃ6円じゃねぇか。この二荷の壺をもらってくよ」。
 そろばんを習った人ならだまされないだろう。

消費税導入
 時代が平成になって消費税が導入された。3%とはいえ事実上の値上げだ。こんな不公平な話はない。「すべて一律に3%だから公平だ」という見方もあるが、収入の多い人と少ない人では、消費税分にかかる負担は違う。それはともかく、何を買っても3%を余分に払うことになった。
 どうせ払うなら、何か痛快なことはないか考えた。結論は・・・。商品の価格に1.03を掛けて合計金額を暗算する。小銭を用意しておいて、レジ係の人が「○○円です」と言うのと同時に、つり銭なしのピッタリのお金を受け皿に出す。目を丸くするレジ係。得意そうにウンとうなずきながらレシートを受け取って引きあげる。
 しかし、そんなシナリオはなかなかうまくいかない。久しく遠ざかっている暗算の腕前は情けないほど錆びていたからだ。合計金額が3桁なら何とかなったが、4桁以上は「はずれ」が多く、返り討ちにあった気がした。
 そして5%。このときは楽だった。3%は1%の3倍だが、5%は10%の半分。計算は楽になり、暗算の腕をあげるには役立たなかった。だが、8%になって再び頭を高速回転させる必要が出てきた。 100円の税込金額は 108円と即答できても、スーパーの価格はほとんどが1円単位。それに1.08を掛けるのは容易でない。しかし、そこが頭を鍛え、そして老化させないことにつながるのだ。
 今度は10%になるという。この暗算は楽だ。昨年春から8%にしたことで日本経済はしばらく滞ってしまったため、さらなるアップに懸念の声もある。計算は楽になっても、生活は楽にならない。

タイムキーパー
 3年前の3月から、群馬テレビのニュースキャスターをしている。月曜から金曜の夜8時~9時のニュース番組。22歳からずっと続けてきた新聞界から、63歳になってテレビ界への転身だ。ニュースを扱うことでは新聞もテレビも同じだが、紙媒体と電波媒体はまったく違う。記者は書き損じても書き直せばいい。適当な言葉が出てこなければ辞書や文献、資料を見直せばいい。記者は紙面に出ることは少なく、ペンだけで社会を斬ることを生業(なりわい)としている。しかし、電波、それもニュースは生放送だ。言い淀むことも許されない。
 もう一つの大きな違いは時間が決められていること。新聞も紙面のスペースは決まっているが、窮屈に詰め込んだり、見出しや写真を小さくすれば入らないとあきらめていた記事が入る。だが、テレビは秒単位。タイムキーパーという仕事があって、1時間の番組の中で「何分」あるいは「何秒」遅れている、もしくは早すぎるという合図をするわけだ。だが、それはキー局でのこと。地方の小さなテレビ局では、サブディレクターが兼ねていることが多い。私が関わっている番組もそうだ。兼務だから、そう細かい指示はできない。
 そこで、キャスター自身が時間をチェックしている。女子アナの読むニュース原稿を隣で聞きながら、何秒早いとか遅いとか。そしてそのあとの原稿が何分何秒の予定だから合わせて何分何秒・・・次のCMは、このままだと何秒遅れになるから、私のコメントは短めにしよう。これは暗算のなせる技。初めのうちは面食らったが、「石の上にも三年」。楽しく放送させてもらっている。

謹賀新年 ~新年のご挨拶~ 

謹賀新年~新年のご挨拶~

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理事長 平上一孝

 あけましておめでとうございます。皆様にはお健やかに新年をお迎えのことと心よりお慶び申しあげます。
 さて、昨年を振り返りますと、なんと災害の多い年であったかを述懐します。地震・大雨・台風による相次ぐ激甚災害が日本列島各地で猛威を振るい多くの尊い命が奪われ、たくさんの財産が失われました。被災された皆様に心よりお見舞い申しあげます。
 そうした中、私たち珠算教育に関わっている者は被災による子供たちの心の変化を読み取り、真に寄り添ったそろばん教室(学習)運営を心掛ける必要があります。外見でなく、心の中で傷ついている子供たちの様子を見極めながら社会教育の一翼を担っている指導者の立場からしっかりと支えていきたいものです。
 連盟は、今次の重点施策を掲げ活動しています。
①検定受験者増加対策の推進
②新規会員の入会対策の推進
③小学校教育支援事業の推進
④公益法人としての義務と会員資質の向上
⑤今後の小学校学習指導要領改訂に向けた活動
 その中で連盟の主要な目標に目を向けて見ると、連盟の根幹を支えているのは会員数であり、受験者数です。その数が年々減少傾向にあるのは注視すべきことですが、最近の新入会員の半数以上は20歳代~40歳代の若年層(毎年50名ほど)であり、増加対策の成果が出ているものと期待しています。
 また、これらの若手会員が本連盟の施行する各種の検定試験をしっかり活用して教室を運営すれば連盟及び珠算界は社会に対し、その期待にこれからも十分応えられると思っています。
 小学校教育支援事業の推進では、全珠連会員を始めとする多くの珠算指導者が積極的なボランティアを展開し、全国3千余校に
講師を派遣し、関係者から多大な好評をいただいています。こうした地道な活動が珠算界を支えていることと感謝の意を申しあげます。
 さて、9月の定時社員総会の後、役員研修会が開かれました。テーマは「公益法人のガバナンス~今、求められているコーポレイト・ガバナンス~」と「今後の発展のために・連盟支部会計の知識」と題し、連盟監事の神本満男先生が公益法人に求められているガバナンス(統治・統制)の重要性について、また、連盟理事である公認会計士の木田稔先生が会計の留意点と今後の課題についてそれぞれ解説いただきました。「法人自治は理事・監事、支部長・代議員を始め、会員一人ひとりによって成る」ことを改めて感じています。
 今年は、日本にとって歴史的に大きな転換期となります。連盟では珠算検定応用計算種目の一部改正に向けた準備を進めてまいります。移り行く珠算界の中で役職員と共に時代をしっかり見据えながら、元気で諸課題に向かって取り組んでいく所存であります。会員を始め関係各位の一層のご指導ご鞭撻をお願いして挨拶といたします。