YELL VOL.9~社会の第一線で活躍するそろばんOBからの応援メッセージ~ from隅野 貴裕
YELL VOL.9
~社会の第一線で活躍するそろばんOBからの応援メッセージ~
from 隅野 貴裕(毎日パソコン入力コンクール技術顧問)
※連盟広報誌「全珠連会報」第171号(2016.11)に掲載
昭和57年 東京都小平市生まれ
平成14年 第1回毎日パソコン入力コンクール優勝(以降第6回まで連続優勝 内閣総理大臣賞他、受賞)
平成15年 全日本タイピスト連合設立
現在はシンガポールにてITコンサルタントに従事
初めにお伝えしますが、実は私はそろばんではなく、キーボードを使った文字入力、つまりタイピングにずっと取り組んできた人間です。毎日新聞社と日本パソコン能力検定委員会の主催する「毎日パソコン入力コンクール」の全国大会において「フラッシュ暗算」という種目があり、そこで毎年珠算の達人の素晴らしい計算能力を拝見しており、そのような場の繋がりからこの機会をいただきました。そろばんもタイピングも、目標を持って日々研鑽に励むこと、検定や大会など努力の成果を発揮して挑戦する場があるという共通点があります。そうして一つの技術に向き合っていくという視点からメッセージをお伝えしたいと思います。
私がタイピングと出会ったのは、小学校の頃でした。当時はまだパソコンが物珍しい時代でしたが、キーボードを見ないで入力するということに漠然とあこがれを感じていました。幸運にも早い段階でタイピングの練習ソフトに出会い、ホームポジションという正しい手の置き方や指使いを学び、夢中になってキーボードを叩き続けました。そろばんにもありますが、文字入力には速度や正確性という指標があります。練習ソフトではこれが数字としてわかるように表示されたため、日々成長していくことを実感することができました。対戦相手がいたり、チームで取り組んだりするスポーツと違い、自分との戦いになりがちなタイピングの練習において、こうした成績の記録というのは、モチベーションの維持に大きく貢献しました。今より少し上の目標を設定し、それを一つひとつ達成していく。そんな小さな達成感の積み重ねは、努力が形になるということを学ばせてくれました。
ほどなくして、インターネットの時代が始まりました。今でこそ当たり前ですが、家に居ながらにして、パソコンに向かうだけでいろいろな情報を調べることができたり、誰かとコミュニケーションが取れたり、というのは当時の私には衝撃的でした。そんなある日、インターネット上でタイピングの記録を競い合うウェブサイトを見つけたのです。これが私にとっての転機でした。それまで黙々と一人で取り組んでいたタイピングでしたが、そのウェブサイトによって初めて自分の速さが一体どのくらいのものなのか、ということがわかるようになったのです。そして、人と競い合えるという場は、さらに高い目標設定につながっていきました。
競い合うようになってから、それまでに加えて一つ大きな要素が加わりました。挫折です。そろばんでも、絶対に間違いない、合っている、と思っていても採点をしてみたら計算に誤りがあった、ということがあると思います。タイピングでも、気持ちのよい程速く打つことができ、これなら!と思っても相手の方が速かったり、正確性で及ばなかったりというのは、一人で練習しているときには無かったことで、初めて抱く感情でした。当時、タイピングというのは覚えるための方法論(ホームポジションなど)は確立されていましたが、それをさらに速く・正確にしていくための方法論はまだまだ不足していて、手探りでした。速さと正確性を求めて、正しいと思って覚えた打ち方や指使いを変えることもありました。たかがタイピングに何をそんなに本気になっているのかと問われることもありましたが、今ならいえます。対象が何であれ、本気で取り組み、小さな達成感と挫折を繰り返しながら習得した技術、そしてその経験というのは何物にも代えがたいものです。努力する楽しさ、その過程にある挫折、その結果としての成長。こういったものが、その後の私の人生にも大きな影響を与えています。
冒頭で述べた「毎日パソコン入力コンクール」に出会ったのもこの頃です。第1回の大会が行われることを新聞で知り、これまで取り組んできた自分の力を試してみようと申し込みをしました。この大会ができる前は、タイピングゲームの発売記念イベントや、学校の文化祭で行われる小さな大会があったくらいで、さほど規模の大きなものは無かったと思います。自分でもまさかの結果でしたが、コンクールでは優勝することができ、今度はこれを防衛していくためにも、単なるキーの入力速度だけではなく、日本語の漢字変換を含む文章をいかに速く、効率的に入力していくか、という研究に繋がっていきました。その頃には社会人になっていましたが、本業である仕事とは別にライフワークとして真剣に打ち込めることがあるというのは本当に幸せなことだと思いました。2003年には全日本タイピスト連合という団体を設立し、タイピングという技術を広めていく活動もはじめました。
それからだいぶ経ちますが、今でもタイピングは私のライフワークの一つです。仕事を通じて物事をロジカルに整理する、という経験をすれば、これを活かしてタイピングの教育方法を考えたり、海外で仕事をするようになったら、それを活かして海外のタイピング団体にコンタクトを取り、タイピングの世界大会に参加してみたり。思いもよらなかった形でタイピングとの関係は続いています。
そろばんもタイピングも、計算や文字入力といった目的があり、そのための手段であることは間違いありません。タイピングにより、メールや資料を素早く仕上げることができるでしょう。そろばんの場合には、計算、そして暗算という形でも活きてきますよね。でも、私はそれだけではないと思っています。今、打ち込んでいるその努力、それによって身に付けた技術とその過程は、単なるスキルに留まらず、自信などのマインド面にも大きなよい影響をもたらしてくれると思います。もしかしたら、人生で切っても切り離せない、やりがいの一つになるかもしれません。達成も挫折もあると思います。でも、努力は裏切りません。ぜひ、がんばって邁進されてください。私も、タイピングアジアカップの開催を夢見ながら、まだまだ邁進します。
以 上
- [2016/10/19 09:21]
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第98回日数教大会が岐阜市で開催
第98回日数教大会が岐阜市で開催
8月3日、岐阜県岐阜市で開催された第98回全国算数・数学研究大会の小学校部会において、(公社)全国珠算教育連盟・珠算教育研究所と算数教具部会による研究発表が実施されました。
研究発表は幼稚園・小・中・高・高専・大学の各部門に分かれて行われ、幼稚園・小学校部会は16分科会100件以上の発表がありました。
珠算教育研究所と算数教具部会による本年の発表は分科会形式で実施され、ポスターセッションによる発表を含めて16年連続26回目となりました。
分科会は、「そろばん授業の実践と活用―数や量に関する指導上の課題解決に向けて―」と題し、理論と実践の2部構成で行われました。
<第1部>
大場一輝氏(東京都狛江市立緑野小学校長)と落合誠一郎氏(前東京都板橋区立高島第五小学校長)が担当し、算数授業での課題点について発表されました。
<第2部>
算数教具部会の小原光治委員他4名が、そろばんによる課題解決の具体例を発表しました。
当日は、野呂岐阜県支部長をはじめ多くの参加者が訪れ、関心の高さが感じられた大会でした。
- [2016/10/03 08:55]
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