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第56回全国珠算研究集会 開催 

珠算学習者の「学び」を支える指導者の研修

風光明媚・名所旧跡の町、香川県高松市
第56回全国珠算研究集会 開催
       
 第56回全国珠算研究集会は平成21年12月26日、海風なびく晴天の中、香川県の県庁所在地・高松市の「サンポートホール高松」においてに盛大に開催された。(主催社団法人全国珠算教育連盟、後援文部科学省・香川県・香川県教育委員会・高松市・高松市教育委員会等)

第56回全国珠算研究集会

「新しい時代」の「新しい研鑽」

 瀬戸内海の交通・商業の中心地「香川県・高松市」には全国各地から約450名を超える珠友が参加した。
 午前9時30分、生駒副理事長の開会のことばに続き、国歌斉唱・全珠連歌斉唱の後、梶川理事長から主催者挨拶があった。
 挨拶では「自分たちの使命である珠算教育を通して日々研鑽を忘れず、子どもたちを指導する努力を積み重ねてほしい。基礎教育の中でより珠算指導の重要性が高まった新時代にふさわしい指導を求め、本日の研究集会が大いに役立つことを期待する」と述べた。
 続いて文部科学省の西村修一氏が「教育基本法の改正により、これからの子どもたちは変化の対応に順応し、伝統文化を残し、新しいことを吸収する力を身に付けることが大切となる。
 数の仕組みや計算の意味を理解する助けとなっているのがそろばんである。そろばん学習から基礎学力を養い、将来への教養を高めるための確かな学力向上を期待している」との激励の挨拶があった。
 その後、香川県知事(代読)・山谷えり子参議院議員らが祝辞を述べ、本日参加の来賓紹介があった。   
 元外務大臣・中曽根弘文参議院議員・有村治子参議院議員を始めとする多数の祝電が披露され、開催地・川田支部長の歓迎挨拶後、澤田研修学教委員長から研究助成論文審査経過報告、研究奨励授与・研究集会発表講師紹介、日程説明が行われた。

講演・研究発表・特別発表

 午前10時30分から開始された講演は、尼崎市教育委員会・教育次長徳田耕造氏を講師として「尼崎市における『計算科』導入の効果について」のテーマで行われ、「計算科導入後と導入前の児童の学力の対比」ほか貴重なデータが示され、有意義な内容となった。
 昼食後は研究発表「5珠・10珠ミックスそろばんによる幼児からの指導教材と指導法の一考察」について矢口三郎氏(茨城県)が、特別発表「珠算式暗算を世界の学校へ これは夢でしょうか?」についてまるかりあん君枝氏(イギリス)が参加者の心をひきつける発表を行った。  
 午後4時、澤田研修学教委員長の挨拶、次回開催地・広島県の岡田支部長挨拶、山口副理事長の閉会のことばで、全日程が無事終了した。

尼崎市における『計算科』導入の効果について 

第56回全国珠算研究集会 講演 (講師・発表者の敬称略)

「尼崎市における『計算科』導入の
         効果について」


  尼崎市教育委員会・教育次長 徳田 耕造 

講師の徳田耕造氏
※講師の徳田耕造氏

はじめに

 全国的に学力向上が話題となり、尼崎市においても長年の課題であった。これまでも各種の取り組みを実施してきたが、その成果は保護者等も含めて実感できるものではなかった。
 「計算科」、すなわち、珠算を導入することのねらいは、「点数に見える学力向上を図ろう」というものであった。

尼崎における教育の動向

 現在が大きな転換期で、20年間で児童数が5割以上減少した。今後は安定期と予想される。また、教職員の世代交代が急速に進んだ。ここ8年で小学校429人(約38%)、中学校で139人(約14%)を採用した。
 市では学力向上の課題に対して「学力・生活実態調査の実施」ほかの取り組みが始まり、継続されている。

尼崎市・学力向上に向けての対応
 「計算科」を含めて、尼崎市では以下の取り組みを行っている。

◎学力・生活実態調査
  量的調査と質的調査
  4校でフィールド・ワークの実施
◎「計算科」の実施
◎きめ細やかな教育推進事業
  ①中学校基礎学力向上プロジェクトの実施(平成18年から・継続)
   中学校16校に補助員の配置(週4時間、中一が対象)
◎基礎学力向上プロジェクト(平成15年から・継続)
  ①小学校20校に補助員の配置(週4時間、中1が対象)
◎学習習慣支援事業
  ①教育啓発誌の発行(平成18年から・継続) 年間3回、保護者・地域向け
  ②土曜チャレンジスクール事業(平成19年から・継続)
   年間35回を上限に土曜2時間、教職経験者1名、大学生等5名
◎特色ある教育活動推進事業
  ①言語力向上事業
   小・中学校3校で国語・算数以外での特色づくり事業
  ②指導力向上等事業
   全教員による年1回の研究授業
  ③マイスター認定事業
   教科指導の名人を認定。17名(小9人・中8人)
◎学力向上関係のみの予算推移

教育課程特例校制度における「計算科」について

◎計算科導入まで
  全国的にも学校選択制や小中一貫校・中等教育学校・二学期制・少人数学級の
  導入など、教育改革が取り組まれた。
  授業に集中できない、指導に従わない児童・生徒が増加し、不登校児童・生徒も
  憂慮すべき状況である。
◎計算科の目的
  ①珠算学習を通じて集中力や持久力の向上を図るとともに、日本の伝統文化の
   良さを体験させ、豊かな人間性の育成を図る。
  ②家庭での取り組みや地域人材の活用・要綱団体等との連携を図ることにより
   「珠算による学校と地域の交流・活性化」を目指す。
  ③「暗算を楽しめる児童」「数を見て判断できる児童」の育成につながることを
   目指し、日常生活や地域活動で活かせる計算能力の向上を図る。
◎期待される効果
  ①右脳の発達(知覚→記憶→選択の流れ)脳の活性化によって算数以外の幅広い
   教科の学習に効果
  ②集中力・記憶力・洞察力・情報処理能力・速聴・速読能力の向上
  ③暗算を含めて、実用性が高く、永年的効果が期待できる
◎具体的な内容
  小学校に「尼崎計算教育特区」として「計算科」の時間を設置
  (現在は教育課程特例校)
  ①平成16年に1校→5校→10校→15校→21学校(平成20年)
   平成21年に全校(43校)で実施
  ②小学校2年生の3学期から始め、3年生から6年生まで年間50時間「計算科」
   を実施。(現在は3・4年生で実施)
   週あたりでは週1回(45分)と週3回(10分)
  ③珠算団体の協力による「珠算指導非常勤講師」の配置
   (現在24名の講師に依頼)
  ④キッズ検定の実施
◎児童・保護者の評価・「計算科」のこれまでの評価
  児童・保護者から好意的に受け入れられた、また、教員の意識改革にも
  役立った、そして尼崎市としてのイメージアップにつながった。

「計算科」の学力調査における効果

 算数の成績だけでなく、他教科にもよい効果が表われた。

「計算科」を含めた尼崎の教育の今後

 これまでのことから、現時点では「計算科」導入により学力向上の効果は認められる。しかし、直接関係のないと思われる国語や社会の成績が向上している理由は何か。この効果が「計算科」導入に伴うものなのか、それらを含めた「積極的な取り組みによる効果」なのか、以上の調査が必要とされる。

◎「計算科」の今後
  児童や保護者、市議会等の関係者、導入校、さらに学力生活実態調査の
  評価等を総合的に検討し、すべての学校で導入された。
  今後は3年間を経過した時点で、全市的な調査を行い、評価及び効果を
  検証していく。
◎尼崎市の教育の今後について
  学力向上は尼崎市における最大の課題である。
  ただ、点数に表される学力だけでいいのか、と思う。
  また、徳育や体育との関連はどうか。各学校において自らの課題を明らかに
  し、そのための具体的な取り組みとその成果を出していくことが求められる。

幼時からの指導教材と指導法の一考案 

第56回全国珠算研究集会 研究発表 (講師・発表者の敬称略)

「5珠・10珠ミックスそろばんによる
 幼時からの指導教材と指導法の一考案」


  茨城県 矢口 三郎

研究発表の矢口三郎氏
※研究発表の矢口三郎氏

 平成20年1月から開始した「幼児への10珠そろばん授業」を、珠を同時に瞬時運珠する等、試行錯誤を繰り返し、 種々実践してきた。その教材の作成と指導法について発表。

授業内容 

 「大きな数」・「ABC」・「わたしの友だちどこにいる」・「10のたし算ひき算」・「かけ算九九の歌」を学習進度に合わせて歌い、10珠そろばんによる読上算・見取算・数字・ひらがなの読み書き学習をカード等も使い進める。
 オリジナルのピアノ伴奏に合わせ、楽しく歌って覚えるテープとCDを作成し、九九カードとともに生徒に貸与し、家庭学習も呼びかけている。

ミックスそろばん考案の効果

 幼児の場合、子どもの脳の活性化には最良の学習であるはずの「そろばんの5珠学習」が理解困難なところがあり、年齢が低いほど高くなるようである。その点、10珠そろばんは数の基礎を初めて学ぶ時期から導入して、無理のない進度に合わせて「色別に数えて同時運珠を進める」ことで4歳児からでも10の合成分解まで無理なく導入が可能となる。
 5珠と10珠が常に隣り合わせているので、お互いのそろばんの理解が深まり、数が比較しやすく、5珠そろばんに強い興味を持つ。

全国での「珠算学習生が年長・小学1・2年生中心の教室」を目指して

 おはじき的学習で計算中、常に“わけるといくつ”を意識させる。
 具体物を目で追って暗算で捉えているので、幼児の柔軟な脳が活性化され、数の基礎力が養成される。
 10珠そろばんで10の学習まで到達すると、学年を問わず、5珠そろばんに移行する。
 また、この指導は珠算学習に経験のない保護者でもできるので、家庭で10珠そろばんの学習効果等の理解を深めてもらう。
 一人でも多くの低年齢生に無理なく学習を進めることで、日本の珠算学習者の低年齢化に生かしていきたい。

珠算式暗算を世界の小学校へ 

第56回全国珠算研究集会 特別発表 (講師・発表者の敬称略)

「珠算式暗算を世界の小学校へ
    これは夢でしょうか?」


  イギリス まるかりあん君枝 

自作教材を手に世界へ。まるかりあん氏
※自作教材を手に世界へ。まるかりあん氏

数字は世界共通だが
 数詞は各国で異なる


 ヨーロッパ・中東・ロシア・北アフリカで唯一の日本語衛星放送での特集番組の映像が会場のスクリーンに映し出された。イギリス在住40年というまるかりあん君枝氏の特別発表は、この紹介から始まった。
 1970年に結婚、ロンドンで生活を始めた氏は20年間、自宅で珠算を指導した。しかし、週1回の練習で、7年間かけて3級がやっとであった。
 また、週1回、インストラクターとして学校で活動していたが、かけ算九九を知らないので、9級でつまずいてしまう。
 数字は世界共通語であるが、数詞は違っている。
 フランスでは、小学校1年生で69までしか教えない。70は「60と10」という。「80は4の20倍」、「98は4の20倍と18」。
 また、ドイツでは、13からは「3と10」、「4と10」、「365は300と5と60」と表わされる。これでは数の大きさが分からない。
 そこで、氏は1990年からイギリスでボランティアによるそろばん指導を始めた。また、海外へもそろばんの良さを紹介し始めた。それにはエスペラント語が大いに役に立ったという。

エスペラント語世界大会で
 珠算・そろばんを紹介


 東京オリンピックのときに働いていた友人から「英語が話せない人もいる」という話を聞き、数詞が日本語と同じであるエスペラント語を習った。
 「エスペラント語は話せる言葉だ」として、各地で開かれる世界大会に招かれるようになった。そのときにそろばんを紹介する。それがハンガリーにそろばんが根付いた発火点であった。
 最初から数をそろばん珠でイメージして計算できれば、数詞の違った国々でも問題を克服できるのではないかと思ったそうである。
 そろばんがあったほうがいいけれど、買えない国もある。初めのうちはそろばんの珠をノートに○で書き、それで計算することができる。
 慣れたら暗算になる。これなら小学校の加減算に間に合い、自信をつけられる。そのうち珠が見えるようになる。これを可能にするため先生は自作教材を作って世界を駆け巡っている。

2010年、3つの珠算プロジェクト
 
 2010年には3つのプロジェクトがある。3月にスペイン語の国・キューバに行き、教育関係者にそろばんを紹介する。また、5月にフランス、8月にはドイツに赴く予定だ。
 発表から地球的規模で活躍するまるかりあん氏の情熱が伝わってくるようであった。

各地で新春はじき初め 

各地の話題

平成22年 新春そろばんはじき初め

大阪天満宮
 「新春奉納はじき初め大会」

ピンクの法被姿でお祓いを受ける参加者 新年を飾るはじき初め

 平成22年1月3日、学問の神様・菅原道真公が祀られている大阪天満宮境内において午前10時から正午まで新春奉納はじき初め大会が行われた。
 大阪の珠算三団体が協力して行い、参加者は毎年1,000人を越える人数にのぼる。
 「朝八時から並んだ」という親子連れらが最初で、神主のお祓いがあり、長~いそろばんを使用し3桁5口の読上算に挑戦した。
大阪天満宮は、夏は日本三大祭の天神祭りで賑わい、正月は初詣で賑っている。
 その境内の一番良い場所で行われる「そろばんはじき初め」は見物客も多く、注目されており、昨年からラジオの生中継も行われている。
 毎年、参加者先着1,000名には「学業御守・干支のキーホルダー・そろばんせんべいと法被」がプレゼントされている。
 法被は毎年色が変わり、今年は鮮やかなピンク色。それを羽織ってはじき初めをしている光景は、大変華やかであった。また、法被を着て、大阪一の商店街・天神橋商店街を歩いて帰る子どもたちは多くの人たちの目を引き、そろばんのいい宣伝にもなっている。

全珠連奈良県支部・県珠算協会共催
 「新春そろばんはじき初め大会」

一斉に読上算にトライ=橿原神宮 今年の目標を絵馬に書いて上達祈願

 年の初めにそろばんの上達を祈願する「新春そろばんはじき初め大会」が、1月3日に奈良県・橿原神宮において開催された。(全珠連奈良県支部と県珠算協会の共催)
 このはじき初め大会も今回で13回目。年々参加者が増加し、今年は約700名の子どもたちが楽しくそろばんをはじいた。
 参加者は「そろばんが上手になりますように」、「今年中に段位に合格したい」などの願いごとを書いた絵馬を奉納し、神職によるご祈祷を受けた。
 その後、大勢の保護者が見守る中、127桁の長そろばんを使って新年最初の読上算に挑戦した。
 子どもたちは1題ごとに元気よく手を挙げ、「ごめいさん!」の声に周りからは拍手が巻き起こった。

絵馬にお願い 
 「願いましては」上達祈願に
 ~京都府支部~

長桁そろばんで今年のはじき初め 500名が参加した北野天満宮でのはじき初め

 新年1月5日、恒例の「新春そろばんはじき初め」が京都市上京区の北野天満宮で開催された。(全珠連京都府支部・京都珠算振興会共催)
 今年は幼稚園児から高校生まで過去最高の500名が参加、午前10時、本殿に参拝し、そろばん上達・学力向上を願って祈祷を受けた。この後、絵馬所に場所を移し、フラッシュ暗算の模範演技と読上算によるはじき初めが行われた。
 圧巻は長さ5.5メートル、400桁もの長そろばんに10人が座ってのはじき初めで、珠算教師が読み上げる問題に対し、参加者は大変楽しそうに指を動かしていた。
 はじき初めを終えた子どもたちは上達祈念の賞状を受け取り、天満宮から贈られた絵馬に各々願いごとを書いて家路についた。

東京
 湯島天満宮ちびっ子そろばんまつり


読上算に集中する参加者 神妙な面持ちで、お祓いを受ける

 新春恒例「第35回ちびっ子そろばんまつり」が2月7日、学問向上の神社・東京都の湯島天満宮において盛大に行われた。(全珠連東京都支部主催)
 空は青く澄んでいるものの、厳しい北風の吹く中、「湯島梅まつり」を控え、梅の香り漂う境内。早朝から小学校2年生以下のちびっ子97名が保護者に連れられ、そろばん片手に参集殿に集まった。
 開会の言葉、村田支部長の主催者挨拶、湯島天満宮宮司の来賓挨拶の後、ちびっ子達はそろばんを持って本殿へ移動。お祓いを受け、小さな手で拍手を打って、上達祈願をした。
 この間、参加生徒の保護者は村上次雄同支部顧問の「そろばん学習の効用」「最新の珠算情報」のミニ講習会に聞き入った。
 境内へ移動したちびっ子たち。多くの一般参詣者が見守る中、「283桁のそろばん」で読上算に挑戦した。
 また、「そろばん御輿」による境内練り歩きのときは、一般参拝者からも「ワッショイ、ワッショイ」と掛け声と歓声が上がり、大賑わいとなった。さらに参加者全員が、「そろばん・あんざんの上達」の願いを込め、大空に一斉に風船を飛ばした。恒例東京都支部大絵馬も各教室の祈願絵馬と一緒に奉納された。