第54回全国珠算研究集会 開催  

日本の海の玄関・日本の近代文化発祥の地が舞台

神奈川県横浜市で
第54回全国珠算研究集会 開催       

第54回全国珠算研究集会=神奈川県横浜市

珠友550名・未来都市ヨコハマに集う=神奈川県立青少年センター
※珠友550名・未来都市ヨコハマに集う・神奈川県立青少年センター

 安政6年の開港以来、現在まで日本文化・経済を支え、「みなと未来21」に象徴される未来都市・国際都市神奈川県横浜市。第54回全国珠算研究集会は冬晴れの中、「神奈川県立青少年センター」において平成19年12月26日に盛大に開催された。(主催・社団法人全国珠算教育連盟、後援・文部科学省、神奈川県、神奈川県教育委員会、横浜市、横浜市教育委員会ほか合計10)
 
 海洋「長崎県・長崎市」から中華街で有名な国際都市「神奈川県・横浜市」へ移り、第54回全国珠算研究集会へ各地から約550名の珠友が参加した。
少し足を運べば、歴史建造物が数多く建ち並ぶ情緒ある姿を今もとどめている街・横浜。
 午前9時30分、生駒副理事長の開会のことばに続き、国歌斉唱、全珠連歌斉唱、梶川理事長から主催者を代表して「最近の検定受験者増に驕らず、自分達の使命である珠算教育を通して日々研鑽を忘れることなく、子ども達に指導する努力を続けることが大切で、これからも社会的責任を持って連盟創立以来の公益法人の道を邁進する」と挨拶を行った。
 続いて文部科学省の吉野弘一氏が「教育基本法の改正により、これからの子ども達は変化の対応に順応し、伝統文化を残し、新しいことを吸収する力を身に付けること、日本文化の一つであるそろばんを英語で海外でも広められる子ども達を育成するのも大切。基礎・基本で大切あり、それがあって生きる力が生まれるのである、そろばん学習から基礎学力を養い、将来への教養を高めるための確かな学力向上を期待している。」と挨拶した。
 このあと、神奈川県教育長・引地孝一氏らが祝辞を述べ、本日参加の来賓紹介があった。   
 引き続き参議院議員中曽根弘文先生を始めとする多くの祝電が披露され、開催地・及川支部長の歓迎挨拶後、澤田研修学教委員長から研究助成論文審査経過報告があり、梶川理事長から本井照人氏(広島県)へ研究奨励が授与され、講師・発表者紹介、日程説明の後、午前10時30分から講演が開始された。

及川正巳神奈川県支部長挨拶
※及川正巳神奈川県支部長挨拶
 
講演と2つの特別発表

 今回の講演は国際医療福祉大学大学院教授・和田秀樹氏の「私の教育改革論、算数・数学教育の大切さ」というテーマで行われ、巧みな話術で、独自の理論を披露し、有意義な内容であった。
 昼食後は、特別発表「心と身体の健康を求めて」(文教大学人間科学部准教授・大木桃代)、「NEW STAYLEそろばんガイダンス」(検定競技委員会委員・菊地正芳)の両氏が参加者の心をひきつける発表をした。  
 午後4時20分から澤田研修学教委員長の挨拶、次回開催地・宮城県吉田支部長挨拶、村上副理事の閉会のことばで全日程が無事終了した。

「私の教育改革論―算数・数学教育の大切さ―」  

研究発表
「私の教育改革論
   ―算数・数学教育の大切さ―」


  国際医療福祉大学大学院教授 和田秀樹 氏

基礎学力を重視する教育を・和田秀樹氏
※基礎学力を重視する教育を・和田氏

原点はそろばん

 小学校3年生の1年間、そろばん塾に通い、その時が充実していた。1年で3級に合格した。関西から関東に転校した時、関西弁でいじめられたが、計算が速いということで得をした。
 子どもの、ある時期は詰め込み教育が必要となり、鍛え上げなければならないときがある。米・英・日いずれも子どもを中心にして失敗している。
 「勉強はやればできる」ということを伝えたくて映画を作った。「格差社会では勉強することが大事だ」とされ、ヨーロッパでウケた。(モナコ国際映画祭グランプリ・受賞作品「受験のシンデレラ」・最優秀作品賞・最優秀女優賞・最優秀男優賞・最優秀脚本賞)
 フィンランドでは勉強することがカッコいいと思っている。勉強することがカッコ悪いというようなバラエティー番組はフィンランドのテレビ番組にない。
 江戸末期、日本は識字率が高かったと言われるが、フィンランドはもっと高かった。義務教育が早くから始まっていて、聖書が読めないと結婚できなかった。しかし、日本は義務ではなく、庶民が自分の子どものために自腹を切って、寺子屋に通わせていた。これはすばらしいことだと思う。

学歴社会から学力社会へ

 子どもの数が減ってきたので、学力の低い学生がいい大学に入っている(AO入試などで)。昔は国際化といえば外国へ行って技術を売ることだったが、今は違う。日本の会社に勤めていたら、ある日突然、外国人が社長になる。
 東京大学を出ているというのは役に立たない。ハーバード大学は上の方の研究員がすごいから大学全体が名門となり、(すべての)学生が学力がなくても名門と言われる。そこで成績や学力をモニターするための指数を開発する必要が出てくる。
 OECDが大学評価の国際調査の基準作りを検討している。学歴ではなく、どれだけ学力があるかが大事になる。教育レベルが国力である。頭のいい国ほど強い。教育にお金をかけるべきだ。
 フィンランドは教育費の占める割合が多い。しかし、日本では校舎は立派で、建物に金をかけている。「人が大事だ」という発想がない。

21世紀に求められる頭の良さとは何か―認知心理学から見た頭のよさ―

 生まれついての頭より、後からのソフトが大事。つまり勉強するということ。問題解決能力(思考能力)は知識を使って推論することができるということ。
 問題解決のために知識を用いて解決する。知識が多いほど自己の認知パターンを正しく知ることができる。自分を知るだけでなく、それを使って自己改造ができる。他人の知識を使って(賢い友達からの情報で)、より正しい推論ができる。
 IQが高いのに社会に出て成功できない人のためのアドバイスは、
 ◎自分の感情を知る
 ◎自分の感情がコントロールできる
 ◎自分を動機づける
 ◎他人の感情を認識する
 ◎人間関係をうまく処理する
 以上のことを心掛けて、21世紀に通用する頭の良さをつくる。

単純な計算と読み書きの意味

 脳が活性化する。以前は頭頂脳と思われていたが、前頭前野が活性化される。前頭前野が発達すると感情のコントロールができ、キレる子どもが少なくなる。
 計算の効果は脳のウォーミングアップ。脳の働き・記憶力がよくなる。
 日本の教育は何が悪かったか。
 詰め込み教育を悪とした。問題解決には知識を使うが、知識を疑う教育。東大に入るだけではダメ。

基礎学力重視は世界の潮流

 早期に基礎学力を獲得すると、問題処理の迅速化と時間の有効利用ができ、自信を持ち続けられ、受験以外の経験と知的能力を身に付ける余裕が生まれ、脳(前頭前野)の機能開発に役立つ。
 また、受験勉強を通して正しい勉強法を勉強することが大切。下手な勉強法は労力を無駄にする。成功体験が自信となる。できないときは自分が悪いのではなく、方法を変える。「やり方が悪いだけだ」と気づき、人生をあきらめないですむ。また、他の勉強に転用できる。

推論能力や試行力を身に付ける数学

 日本は文系社会で、政治家・役人に文系出身者が多い。しかし、調査してみると大学受験で、理数系・数学受験者の方が社会に出て、年収は多い(早稲田・慶応・上智の経済学部出身者で調査)。
 数学の3つのポイントは、計算力(速く正確な計算)、暗記力(問題を解くためにさまざまな解法パターンを暗記する)、試行力(問題を解くためにいろいろな解法を試す)。
 1つの方法で問題が解けなければ、他の方法が適用できるか考える。数学の問題の解き方は推論と問題解決能力に通じる。
 勉強にも基本的な道徳意識とルールが必要で、校内暴力が増えたときに不登校も増えている。
 計算力が人間力でもある。基礎学力を伸ばし、脱ゆとり教育が今すぐにでも必要である。

「心と身体の健康を求めて」  

特別発表
「心と身体の健康を求めて」

  文教大学人間科学部准教授 大木桃代 氏

医療現場を心理面から見ると家族ほか支える人の存在が大きく影響・大木桃代氏
※医療現場を心理面から見ると家族ほか支える人の存在が大きく影響・大木氏

 医療心理学(医療行為及び疾病とそれに関わる人々に関連する心理学の一領域)を専門に自身の実践報告と研究を発表。
(早稲田大学大学院文学研究科において心理学専攻、博士課程終了。多数の大学で非常勤講師を務める。全珠連東京都支部・大木よしい氏(実母)のもと小学3年生の時に珠算1級を取得。)

身体疾患の医療現場における心理士の活動

 近年、悪性腫瘍や循環器・糖尿病など身体疾患の現場においても心理士の需要が増加している。東京大学医科学研究所附属病院における臨床心理士(指導健康心理士・認定心理士)の活動から紹介する。(主に悪性腫瘍に罹患した患者及び家族の精神的ケア)
 ◎直接的介入(面接・査定・カウンセリング)
 ◎間接的介入
  ①スタッフによる患者・家族の心理面の助言
  ②医療スタッフへの要望・不満の受容・対応⇒患者・家族と医師・看護士などのスタッフとのコミュニケーションの強化⇒信頼関係の強化。

ガン患者に対するソーシャルサポート

 ◎周囲の様々な人からの有形・無形の援助
 ◎道具的サポート〔直接的(実体的サポート)・間接的(情報的)サポート〕
 ◎社会情緒的サポート〔情緒的側面へのサポート・認知的側面へのサポート〕
  どの種類のサポートを求めるかは、その出来事と対象者によって異なる。
 ◎ガン患者にとって有益・有益でないサポート

 有益なサポートとは「ただそばにいるだけ」「関心・共感・愛情を示す」「患者がガンであることを静かに受け入れる」「実践的な援助を与える」「病気の見通し、ガンへの対処能力について楽観的になる」
 有益でないサポートとは「患者のガンへの対応を批判する」「患者がガンによって受けている衝撃を過小評価する」「心配・悲観しすぎる」「関心・共感・愛情をほとんど示さない」

他者のパーソナリティ理解に影響を及ぼす要因

 ◎状況要因
  人は異なる状況においては異なる行動・態度を示す→一時点の言動を見て、
  それがその人の全てであると判断しない
 ◎観察者の認知スタイル
  同じ言動を見ても、それに対する認知が異なる→自分の認知スタイルを自覚する
  必要性

身体疾患の患者にとって家族とは

 家族は何より大きなサポートの提供者、危機的状況においてこそ今までの家族関係が反映される。
 「誰でも身体の病気になります、その時、いかに家族で支え合えるか、ということが、たとえ身体が病気であっても心の病気にならないでいられるか、という大きなポイントになります。本日のタイトルにその思いが込められています。」とむすんだ。

「NEW STYLEそろばんガイダンス」 

特別発表
「NEW STYLEそろばんガイダンス」
   (初歩から高段位までの指導法)

  全珠連検定競技委員会委員 菊地正芳 氏

初歩指導。ポイントは手作り教材と準6級の導入・菊地正芳氏
※初歩指導。ポイントは手作り教材と準6級の導入・菊地氏

目標設定、手作り教材を使用

 競技大会中心の30代を経て、40代になった今、「できない生徒をどれだけできるようにさせられるか」が目標。
 小3の時に3級を取り、そろばんをやめてしまったという自身の体験から、楽しいそろばん教室を目指す。
 やる気を出させるため、飽きさせないように、個々のプリントを準備して生徒を迎え、生徒が満足して帰るように心掛けている。
 その結果、今では「ただいま」と言って教室に入ってくると話す菊地氏。
 高段位を取得するポイントは
  ①まず初歩をうまく卒業させること
  ②6級をうまく卒業させることと暗算指導
 そのために、初歩からすべて独自の手作り教材を使用して指導、6級合格までのプロセスとして準6級を導入している。
 今年(平成19年)から挑戦しているのは乗算の両落としの算法や「節約除算」。見取暗算3桁指導時にエクセル(パソコンソフト)を使用して作問の一端を解説し、補助教材の大切さもアピールした。
 検定競技委員ということもあり、途中、全日本珠算選手権大会開会式の映像も入れ、初級暗算検定試験や準級の勧めもしっかりPR。
 最後に、「先生の手腕次第でよい生徒も育てば、悪くなる生徒もいる」と謙虚に受け止め、「できない生徒をなくし、全珠連検定のいいところを出して、生徒全員を段位まで引き上げることが最大の課題であり、目標でもある」としめくくった。