第63回全国珠算研究集会・珠算指導者教養講座 

第63回全国珠算研究集会
珠算指導者教養講座


 3月26日、上野学園ホール(広島県立文化芸術ホール)において第63回全国珠算研究集会が開催され、全国各地より700名を超える珠算関係者が集まった。また、前日25日には広島県民文化センターにおいて珠算指導者教養講座が開催された。

(主催 公益社団法人全国珠算教育連盟・後援 文部科学省・広島県他) 


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<第63回全国珠算研究集会>

・パネルディスカッション
将来への展望 -新応用計算を考える-

<パネラー>
福井 衛 氏(徳島県)
松岡 茂雄 氏(群馬県)
立花 晴美 氏(兵庫県)
髙梨 和司 氏(静岡県)

<コーディネーター>
前田 珠樹 氏(愛知県)

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 指導経験・指導実績も豊富なパネラーは現在までの応用計算の変遷をしっかりと検証したうえで、将来に向けての応用計算のあるべき姿、その方向性を提案していただいた。

・講演
自ら考え行動する力を育むボトムアップ理論 ~自立型組織を目指して~

<講師>
一般社団法人ボトムアップパーソンズ協会
代表理事 畑 喜美夫 氏

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 指導する高校サッカー部をインターハイ初出場初優勝に導いた「選手主役のボトムアップ理論」。同じ教える者として大いに参考になる、実践的で示唆に富んだ貴重なお話であった。

・実践発表
保育園におけるそろばん指導について ~年長児を対象とした集団授業の方法と実践~

<発表者>
真栄 喜貴弘 氏(福岡県)

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 年々低年齢化が進む珠算学習者。今後、多くなると思われる「就学前児童に対する指導」という課題について、効果的な指導法をご開示いただいた。大いに参考になる発表であった。 


<珠算指導者教養講座>
10代の心模様と対応のコツ

<講師>
広島市教育委員会スクールカウンセラー
勝部 奈美 氏

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 研究集会前日は花冷えの広島、広島県民文化センターにおいて講師に臨床心理士で広島市教育委員会スクールカウンセラーの勝部奈美先生を迎え「10代の心模様と対応のコツ」と題しての平成28年度珠算指導者教養講座が開催された。
 10代前半の思春期の子供をあずかる珠算指導者にとって、どれも知っておくと普段の授業で役立つ講演であった。

〈案内〉第63回全国珠算研究集会及び珠算指導者教養講座 

〈案内〉第63回全国珠算研究集会及び珠算指導者教養講座

【全国珠算研究集会】
 日 時:平成29年3月26日(日)10:00~16:20
 会 場:上野学園ホール(広島県立文化芸術ホール)
 内 容:講  演
       演  題:「自ら考え行動する力を育むボトムアップ理論」
              ~自立型組織を目指して~
       講  師:畑 喜美夫氏
             (一般社団法人ボトムアップパーソンズ協会代表理事)             
     実践発表     
       テ ー マ:「保育園におけるそろばん指導について」
              ~年長児を対象とした集団授業の方法と実践~
       発 表 者:真栄喜貴弘氏(福岡県)
     パネルディスカッション
       テ ー マ:「将来への展望 -新応用計算を考える-」
       コーディネーター:
            前田珠樹氏(愛知県)
       パネラー:福井 衛氏(徳島県)・松岡茂雄氏(群馬県)
            髙梨和司氏(静岡県)・立花晴美氏(兵庫県)

【珠算指導者教養講座】
 日 時:平成29年3月25日(土)14:00~16:00
 会 場:広島県民文化センター
 内 容:「10代の心模様と対応のコツ」
       講 師:勝部奈美氏
            (広島市教育委員会スクールカウンセラー)    
          
〇支部締切:平成28年12月15日(木)必着
〇本部締切:平成28年12月22日(木)必着

〈案内〉第62回全国珠算研究集会 

〈案内〉第62回全国珠算研究集会

【全国珠算研究集会】
 日  時:平成28年3月27日(日) 10:00~16:20
 会  場:愛知県産業労働センター ウインクあいち 大ホール
 内  容:外部講師による講演
      珠算関係者による実践発表及びプレゼンテーション

・支部締切:平成27年12月15日(火)必着
・本部締切:平成27年12月22日(火)必着

珠算指導者教養講座 

珠算指導者教養講座

 全国珠算研究集会前日の3月28日(土)、鹿児島市民文化ホールにおいて、珠算指導者教養講座が開催され、390名の参加者が受講しました。約2時間に及ぶ講習の概略をご紹介します。

 講座は『楽しいそろばんの歴史』―実証と推測―と題し、長い珠算史の中から10項目を選択し、それぞれの実証と推測を交えたもので、また、今では故人になられた山崎輿衛門氏・鈴木久男氏・平山諦氏・竹内乙彦氏などの著作から多くを引用したことに謝意を述べつつ、大垣氏個人の推測も含まれることの了承を求めました。

①メソポタミアの砂そろばんに物証はあるか
 粘土板には代数や平方などの数学のことが多く記されているが、砂そろばんの痕跡はどの文献にも見当たらない。しかし、50万点を超える厖大な数の粘土板が残されているので、痕跡が全くないとも言えない。物証を見つけ出すのは困難であろうが、可能性がなくはないというのが現状であろう。

②古代ギリシャの線そろばんとローマの溝そろばん
 ギリシャのサラミス島には大理石のアバックスが遺されている。ローマの溝そろばんは小型のブロンズ製で溝に玉が崁め込まれ、上下に動き、しかも四つ玉であった。どの程度普及したか不明。2〜3世紀まで使用された形跡。

③中国そろばんのルーツはいつ頃なのか
 1978年に発見された陶製の玉(周王朝紀元前1066〜256)を珠算専門家が計算具「三才算」のものであると認定した。そろばんのルーツは3千年前ということになる。「輟耕録」等に中国そろばん(五玉2個、一玉5個で桁に串刺し)が掲載されていることから14世紀ころに作られたとされていたが、12世紀という新たな説もある。

④ロシアとイスラム諸国のそろばんはよく似ている
 ロシアでは“ショティ”とか“ショーテイ”などと呼ぶ。イスラム諸国では「モハメッドのそろばん」と呼ばれるロシアそろばんとよく似ているもので、どちらが先に原型ができたのかは不明。アバカスと違ったそろばんを使用していたことは事実。

⑤日本への伝来時期を特定する証拠
○文献「日本風土記」「日欧文化比較」「ラ・ポ・日対訳辞典」
○絵画「職人尽絵」「築城図」からすると室町末期(16世紀末)に伝来していたとされている。しかし足利義満の時代“勘合貿易”で150年間の交易の場で、日本人が見様見真似で習得した室町初期との説があるが、論拠としては苦しい、何らかの実証が出れば可能性はある。


⑥日本で一番古いそろばんについて
 実のところ色々あるが、日本で一番古くて由緒正しきそろばんは、前田利家が1592年に肥前名護屋の陣中で使用したものとされていた。ところが黒田官兵衛の家来、久野四兵衛重勝が豊臣秀吉から授かった“拝領そろばん”の方が一番古いものであると判明した。それを証明する古文書が3点みつかったからだ。
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      「紹介された拝領そろばん」


⑦和算家は本当にキリシタンだったのか
 「割算書」の著者、毛利重能はこの本の序文にアダムとイブの伝説を書いている。吉田光由(塵劫記の著者)の墓は表面が無名でキリシタン様式。確たる証拠はないが、推測ではあるが証拠を消そうとした努力が垣間見える。

⑧江戸時代に四つ玉そろばんはなぜ普及しなかったか
 江戸時代、五つ玉がほとんどであったが、歌川豊国の浮世絵「三美人」描かれたもの、東京の法明寺、京都の満願寺の梵鐘に彫られたもの。四つ玉そろばんの効用を説いた「初学算法」という本など、四つ玉そろばんがあった証拠は残されている。いわゆる秤量貨幣(十進法)なので四つ玉が便利だったはず、しかし長年の陋習、五つ玉に慣れ親しんでいたため、四つ玉のほうが便利と分かっていても普及しなかったと推測できる
 昭和13年、文部省が四つ玉そろばんを統一し、現在に至る。


⑨そろばんの競技会は江戸時代からあった
 「初学重宝算法智慧論」(1841年)という本の挿絵には師匠の前で生徒が一対一の技を競う図が載っている。その後新潟県の「セリ算」三重県の「競算」として受け継がれていった。現在のように多くの人数が一斉に行う競技方式は、大正時代に貯金局の大会でその様子が窺える。

⑩西郷隆盛はそろばん上手
 司馬遼太郎の著作「坂の上の雲」のなかで『西郷は若い頃地方事務所(群方)の会計係をつとめていて、武士には珍しくそろばん達者であった・・・西郷はふところに小型そろばんを入れていた』と書かれている。維新の英傑、西郷隆盛とそろばんのつながりがあったということは、大変興味のある歴史のエピソードではないだろうか。

まとめ
 歴史を証明するのは物証、文書、口伝などがある。しかし、明確な証拠は残っていなくとも、その時代における状況証拠や傍証による仮説も十分に検討すべき課題である。これは珠算の歴史も全く同じことがいえる。
 好奇心を常に失わず、冷静に研究を続けていけば、新たな珠算にまつわる資料を発見する可能性はある。もちろん視野も広げなければならないだろう。歴史は常時変化するものだと認識することが大切である。

第61回全国珠算研究集会<プレゼンテーション> 

プレゼンテーション

 講演・研究発表につづき、平成27年4月より開催される新検定「算数チャレンジ検定」について、その概要が発表されました。
 
 栗田幸雄委員による検討委員5名(岡久泰大・小沼光浩・小原光治・前田珠樹・栗田幸雄)の紹介の後、岡久委員長が、珠算学習者のさらなる学力の向上を目指すために、算数科に含まれる知識や数感覚等を高めることを目的として検定試験を実施するという趣旨を述べました。
 続いて、小沼委員より検定試験の概要・内容・手続き・授業モデルの説明がなされました。

1、試験の概要について
・各学年に応じた算数科の内容を出題範囲とする
・検定試験の級位は20段階に設定
・小学3年生以下をジュニアクラスとし、小学4年生以上をチャレンジクラス(平成28年4月より順次開始予定)とする
・試験日は随時施行が可能
・受験料はジュニアクラス700円、チャレンジクラス900円
・問題は原則25問
・試験時間は20分
・80点以上で合格
・合格者には合格認定証を授与する
・3つの級(各学年単位)の合格申請によりメダルを授与する

サンプル問題

2、試験の手続きについて
 申込先は、本部事務局珠算経営振興会とする。(支部での取り扱いのある場合は、各都道府県支部を申込先とする)

3、授業モデルについて
・毎回5〜10分、毎週15〜20分、毎月1回45〜60分、夏休み・冬休み・春休みを利用など、各教室の授業形態に合わせて実施を提案。
 
 小沼委員の説明に続き、前田委員より練習問題集9級、8級、7級、6級から抜粋された問題によって算数チャレンジ検定の問題の中に含まれるねらいや解説、指導上のポイントなどが詳細に説明されました。

 その後、会場からの多数の質問もあり、新しい連盟事業への関心の高さが感じられました。

 最後に、岡久委員長から算数チャレンジ検定への取り組みへの勧めを結びの言葉とし、プレゼンテーションは終了しました。

第61回全国珠算研究集会<研究発表> 

研究発表

 西郷隆文氏による講演「薩摩の郷中教育と薩摩焼」につづき、全珠連鹿児島県支部の戸山沙織氏より、自身の指導経験をもとに「そろばん教室に通う気になる子供 -発達障がい者への取り組み-」という内容で研究発表がなされた。

1、はじめに
 最近よく耳にする「発達障がい」。そう診断されなくとも似たような症状の生徒は年々増えてきたように思う。突発的な言動や不器用さが目立ち、その言動が理解されず、誤解や偏見の目で見られたりする。

2、「発達障がい」とは
 多く見られる「発達障がい」とは学習障がい(LD)、注意欠陥・多動性障がい(ADHD)、自閉症スぺクトラム(連続体)(ASD)の3つである。

障がい

3、取り組むきっかけ
 現在、小学2年生の姪が自閉症スぺクトラムであったことがきっかけ。彼女は出生時、仮死状態で生まれ、その影響で脳にダメージを被り、1歳半ぐらいから「発達障がい」の症状が出始めた。

4、そろばん教室に通う気になる子供(A君の場合)
 小学1年生で入塾、当初から周りの空気が読めない・言語力が弱い等の自閉症スペクトラムのアスペルガー症候群の特徴が見られた。当初は失敗を恐れる傾向があったので、取り組みやすい課題を与えることで本人のプライドを傷つけないように留意して指導し、2年生の途中からは徐々に慣れてきた。現在は4年生でアスペルガー症候群の基本的な傾向は変わらないが珠算暗算共に段位を取得し、自信になっている。

5、トラブル時の対処方法
 パニック時は何を言っても聞き入れないので、落ち着くまでそっとしておき、頃合を見て「失敗しても大丈夫だよ」と声かけをする。他には小さな成功体験を積み重ねることで自信を付けさせる、一度にたくさんの課題を与えないようにする、安心できるようにいつもと同じ環境づくりをする等を心がけている。

6、言葉が理解できない子供への対応
 具体的にわかりやすい言葉を使うように心がける。必ず「○○君、静かにしなさい」というように、主語(名前)をつける。主語をつけないと何でも自分のことだと勘違いしてしまう。

7、グレーゾーンの子供について
 幼少期に「発達障がい」に気づき、専門的な訓練をすると就学前にコミュニケーション能力もつき、訓練の効果が出る。グレーゾーンの子供を健常者と同じ扱いをしてしまうと誤解や偏見、いじめ等不当な扱いを受ける可能性が高いので、早期発見が大切である。時には保護者へ知らせることも必要である。我が子が「発達障がい」であると理解している保護者、理解できていない保護者、そして認めようとしない保護者がいるのでタイプ別に応じた対応をしている。

8、おわりに
 「発達障がい」に対して2つの見方がある。①障がいのある子②高い壁を乗り越える能力のある子である。学校は集団指導であるが、そろばん教室では一人ひとりの子供に合わせた指導ができる。障がいのことだけにとらわれず、特別扱いをせず、長所を伸ばすことを心がけている。