第41回新算数教育研究会箱根セミナー 

第41回新算数教育研究会箱根セミナー

 新算数教育研究会主催の第41回箱根セミナー(後援/文部科学省)が、12月25・26両日「箱根小涌園」にて開かれ、全国より約350名が参加しました。


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<本年の研究テーマ>

数学的に考える資質・能力を育てる授業の創造

<実施内容>
◎第1日目
1.「深い学びをどうつくるか」
パネルディスカッション (講師4名)
2.参加型授業づくり講座
(5つの講座で実施)
◎第2日目
分科会講演と提案
(数と計算、量と測定、図形、数量関係など実践的な研究発表)


 教員を目指す大学生から経験豊かなベテラン指導者まで、2日間にわたり活発な意見交換がなされました。

 次期学習指導要領を見据え、「主体的学び」を意識した、内容の濃い勉強会でした。

 なお、改築にともない、長年実施会場として親しまれた「箱根小涌園」での開催は本年で最後となり、次回からはニューウェルシティ湯河原(静岡県)での開催が予定されています。

熊本地震のお見舞いについて 

公益社団法人全国珠算教育連盟
熊本地震のお見舞いについて

 このたびの平成28年熊本地震における被災地域、被災された方々に対しまして心よりお見舞い申しあげます。

 この地震によって不自由な思いを余儀なくされている方々のいち早い再起・復興を心からお祈りします。

 今後、連盟としまして可能な限りの対策を講じてまいります。


みちしるべ 

みちしるべ
-全珠連学術顧問がおくる学習の羅針盤-
みちしるべ

 秋学期の始まる頃が、大学では中途退学のピークである。どの大学も例外ではなく、せっかく入学したのに途中で諦める学生が少なからずいる。

 退学届の最終許可印を押す際に、「家庭の事情で授業料が払えない」などの理由書を見ると、政党助成金をカットして、若者に給付型の奨学金を増やすと公約する政治家はいないのか、と言いたくなる。しかし、「思っていたのと違う」、「他の進路を見つける予定」などと、安易ではないのかと思える理由も少なくない。しばらく辛抱することや志を持続させることの価値を本人も保護者も考えないらしい。自分らしくなどと、気持ちの揺れにしたがうことを肯定的に捉えているのではないかと思ってしまう。

 大学生の頃に亡くなった祖母は小学生の頃、「たけしは辛抱がよい」と言ってくれたことがある。どのような文脈であったのか覚えていないが、褒められたと思い嬉しい気分であった。何かを続けて行くことは良いことなのだと心に刻んだ。その頃に「持続する志」と裏に自書した竹製の定規が、今でもどこかにあるはずである。

 とかく、人間は飽きやすい。ネズミにペダルを押す作業を繰り返させると、始めは活発な神経細胞の発火が、2万回目頃には疎らになりほぼ消滅寸前という実験データがある。脳は省力化をする仕組みを内包している。したがって、同じことを続けるには何かが必要であり、それは辛抱とか頑張りなどと呼ばれるもので、脳活動に意識的に時に活を入れる仕組みなのかも知れない。持続して同じことに取り組むと、脳はそれまでとは違うやり方を見つけ出す自動性を持っている。持続させていれば事態に適応でき急展開することがあるのだ。このことは以前に行ったそろばん塾の先生での実験で見出したことである。

 そこで、そろばんを習う子供に、「上達すること」を褒めるだけでなく、「休まないで今日も教室に来て偉いねえ」などと、「続けること」は価値があることを伝えて欲しい。何かを「続ける」ことで賞賛された快感が心にしみ込むのは小学生の時期だろうと考えるからである。

 退学届の書類を前に、今から大学生に続けることの価値を教え込むのは容易ではないと思いつつも、試みなければと思うのである。


 

みちしるべ<コンピュータ時代のそろばん> 

みちしるべ


コンピュータ時代のそろばん

 そろばんが脳の視点からあらためて見直され、塾生や検定受験者が増大する方向に向き始めたといわれてからすでに10年ほどたったでしょうか。小学校でもそろばんの授業がほんの少し増え、一時期算数の教科書に導入された電卓は今では姿を消したようです。

 初等算数の段階で、電卓で計算させるのは論外としても、電卓マークが消えた裏には、コンピュータの世界の進歩が著しく、もはや電卓の時代ではなくなってきたから、という考え方もできなくはありません。私たちが望むと望まざるとに関わらず、これからの社会にコンピュータは当然のことながらますます入り込んできます。チェスのプロがコンピュータソフトに初めて負けたのはもう20年近くも前でした。将棋はまだまだといわれていましたが、互角になり始めています。2045年にはコンピュータの知能が人間を上回るともいわれているのです。

 そして今、小学校では電卓どころかタブレット端末の導入が本格的に検討されようとしています。ノートとともに持ち運ぶにはそろばんより収まりがよいうえ、計算のみならず全教科の内容が、どうしたらもっとわかりやすく面白くできるか、一生懸命考えられて入っているのです。カラフルな動画できれいに見せてくれるし、わからなければ、工夫するより先にいくらでもわかりやすい表示に変えてくれ、とにかくよくわかった気にさせてくれる道具です。子供たちは何となく満足し、先生方にとっては教材作りが簡単で、それぞれの子供の能力にあった課題をやらせることも容易です。
 
 でも、本当にこれでいいのでしょうか? 私たちの脳は外部環境にうまく合わせて、自身の回路を形成していきます。指先はタッチの入力に使うだけ、内容は考えるより先にあれこれ示してくれる…、コンピュータが人の知能を上回る前に、そのような環境で形成された脳の方に問題が生じそうです。
 
 コンピュータを作るのも使うのも人間のはずです。人の知能を上回り暴走するコンピュータの世の中にならないような歯止めとして、脳をしっかり使い育てる手立てとして、一見古く見えるそろばんを、これからのコンピュータ社会にうまく組み込んで活用する方法を考えたいものです。

 

みちしるべ<そろばんと生涯健康人> 

みちしるべ

 これまで永い間、全珠連のお力を戴いて「珠算の医学的効用」について勉強させて頂き、医療現場でも珠算学習の重要性を痛感して参りました。
 幼少時から珠算学習で指先運動を続けると迅速で正確な計算能力が身に付くだけでなく、脳科学的には前頭前野の働きが高まり、さらに珠算式暗算の学習によって右脳が活性化されて全人格的な発達が加速する効果が生まれます。自己本来の能力を十分に発揮して社会に大きく貢献できる人間形成のためには、日本古来の教育文化である珠算を最大限活用する珠算塾(寺子屋形成の古典的指導法を現代的に再活用して倫理観の回復も期待できる)こそが現代社会を心身ともに健全に生き抜くための個々の自発的な修行の場として今後も重要な役割を果たすことは間違いありません。そのためには、珠算学習を若年期から始め、そろばんを一生離さない生活を続けることが生涯健康人にはもっとも肝要です。  
 一方では、超高齢化社会を迎えようとする我が国では、健康に対する各個人の自覚だけでなく、現代医療においても医療技術・最新医療機器の発展が目覚ましく、高機能化・複雑化が進み、医療安全管理の重要性が高まってきました。さらに、医療従事者には、「ヒトとして基本的資質」が改めて大きく問われ、まさに、患者に対する優しさと思いやりと勤勉努力だけでなく、生きる力の育成、基礎的・基本的な知識・技能の習得、生涯学習意欲、忍耐力、迅速で確実な思考力・判断力・表現力・集中力、問題解決能力、そして正確な暗算力が厳しく要請されるようになりました。これらの要請内容は、基本的資質の育成を目指す珠算学習の基本理念と重なるものではないでしょうか。
 とりわけ、多忙な看護師、臨床工学技士、麻酔技師などの医療従事者の間で、迅速で正確な暗算能力の有用性が注目されてきました。最近、珠算式暗算に勝れた若い看護師が院内で重用されるという情報も多数得られています。将来には、医学・工学に進む若者達には珠算式暗算の習得が必須となるでしょう。
 厳しい現代ストレス社会の中で果敢に生き抜く生涯健康人であるために、全ての若者が珠算を学び最後までそろばんを友として人生を全うできる最善の道を探すことが今こそ強く求められているのです。



みちしるべ <ソロバンと新運動野> 

みちしるべ

<ソロバンと新運動野>

 「ソロバン」という道具は、指で操作する。最近の脳研究で明らかにされたことであるが、ボールを握る時、手のひらにのせて握るのは、パワーグリップで、下等なサルでもできる。しかし、指先だけで握るのは、プレシジョングリップで、高等なサル、類人猿とヒトしかできない。前者では、系統発生で旧運動野が働いており、後者では、系統発生で新運動野が働いている。
 新運動野を強く働かすのは前頭前野で、前頭前野は使えば使うほど、良く働くようになり、考えること、注意を向けること、判断することがよくできるようになる。計画を立てて、何かをする能力(ワ―キングメモリー、作業記憶)も高くなる。「暗算」をする時、前頭前野(左の方が強く働く)と頭頂連合野が良く働くことが、最近報告されている。
  
 ソロバンと暗算をして、ワーキングメモリー能力を高めれば、計算能力を高めるだけでなく、他の学業成績も良くなると思われるが、まともな研究論文はないので、仮説でしかない。
 
 アメリカで、肥満児を放課後(週5日、10週間)20分、40分と運動(エキササイズ)させたところ、前頭前野のワーキングメモリー能力が増し、学業が向上した。20分より40分の方が良い結果であった(Davisら、Health Psychology,30:91,2011)。ソロバン、暗算とワーキングメモリーの関係の研究論文は、相当数あるが、信頼できる良い研究は見当たらない。前頭前野、新しい運動野とソロバン、暗算の研究が出てきてほしい。
  
 アインシュタインは、永年バイオリンを演奏したので、左手支配の右運動野が大きくなっていることが報告されている(2013)。ソロバンをしても、あるのでは。
  
 運動野(新旧とも)が大きくなると、ニューロンの数が増え、運動能力が増す。運動野以外の領域への影響は不明である。また、新運動野の神経細胞は脊髄の運動細胞に直接つながっているので、早く神経情報を送ることは出来るようにはなるのだが。